原子間力顕微鏡(AFM)のアサイラム リサーチ

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 バンド励起走査型プローブ顕微鏡:フーリエ空間の走行                               
 


Stephen Jesse,1 Amit Kumar,1 Sergei V. Kalinin,1 Anil Gannepali,2 and Roger Proksch2
1The Center for Nanophase Materials Science, Oak Ridge National Laboratory, Oak Ridge, TN 37831
2Asylum Research, Santa Barbara, CA 93117


初めての市販走査型プローブ顕微鏡(SPM)の登場以来20年、フォースベースのSPMが、ナノスケールの問題を探索したり、マニピュレートしたりするための主要なツールとなってきました。SPMイメージングや顕微鏡プラットフォームの数の急速な成長は、最も一般的な操作モード、つまりカンチレバーを周期的に励振し、それに同期してその応答を測定するといったモードが全く変わっていないという事実と対称的です。ここ数年、単純な周期性励起テクニックを超えるSPMの手法が数多く出現しています。このアプリケーションでは、そうした技術のひとつであるバンド励起(Band Excitation; 以下BE)SPM測定の原理と最近の進歩をまとめます。BEはあらゆる大気中および液中用のSPMモードに応用できます。またこの手法はアサイラム社のCypher およびMFP-3D AFMにおいてのみ使用できます。

SPMはナノメータスケールでの使い勝手の良さや、構造の優しいイメージング、マニピュレーションにおいて、ナノサイエンスやナノテクノロジーの主流をなすテクニックに成長しました。形状イメージングの能力を超えて、SPMは電気的、磁気的、そして機械的特性を探る上で、極めて幅広いアプリケーションをカバーすることができます。アプリケーションの成長が顕著なのに対して、伝統的なSPMの測定アプローチ―シングル周波数での明確に定義された周期的な励起に対するカンチレバーの応答の検出―は、このほぼ20年間、実際には同じままになっています1

しかしながら、単振動(single harmonic oscillator; SHO)のモデルである質量‐バネによる単純な例で示すことのできるような、シングルの周波数で得られる探針-表面の相互作用の情報には基本的には制限があります。SHOは4つの独立したパラメータ、すなわち共振における共振周波数ω0と振幅A0、位相φ0、そしてクオリティファクターQによって特性付けされます。共振周波数は主にカンチレバーと探針‐表面のバネ定数によって決定されます。つまりこれによって保存性の探針‐表面相互作用の尺度を提供します。振幅と位相はドライビングフォースに依存し、他方Qファクター(つまりピーク幅)は散逸性の探針‐表面の相互作用の尺度になります。従来のシングル周波数測定においては、ロックインアンプはドライブ周波数でカンチレバーの振幅と位相を測定します。2つの独立したパラメータを測定しているので、シングル周波数検出の手法では、2つの独立したモデルパラメータしか抽出できません。他方、保存と散逸の相互作用をただ一つに決定するためには4つのパラメータが必要になります。さらに、この分析の基本的な前提である、SHOとしてのカンチレバーの挙動は多くの場合、あてはまりません。例えばもし探針とサンプル間の非線形相互作用を考慮するなら、その場合の適切なモデルには4つ以上のパラメータを巻き込むことになり、シングル周波数測定からの情報の欠如をさらに悪化させることになります。

この制限は、カンチレバーの応答を、各空間ピクセルで、一つ以上の、理想的には複数の周波数で探れば解決します。これにより、シングルポイントではなく、フーリエ空間のセグメントを探ることができます。複数の振幅と位相を測定することにより、モデルのパラメータの明確な決定も可能になります。複数の周波数測定には、パルス励起に対するリングダウン応答2、デュアル周波数測定3、高速ロックインスイープ4、相互変調顕微鏡5、高速マルチ周波数イメージング6を使用した数多くのアプローチが開発されてきました。ここでは、アコースティック、電気機械的、そして磁気的なイメージング7に応用されている、最近開発され、市販されたBE手法について議論します。


BE SPMの動作原理。与えられた周波数ウィンドウの中で振幅と位相を事前に定義するために、励起信号がデジタル的に合成されます。カンチレバー応答がイメージの各ピクセルで検出され、フーリエ変換されます。応答と励起信号の高速フーリエ変換(FFT)の比がカンチレバー応答をつくりだします(“伝達関数”と呼ばれることもあります)。応答を単振動にフィッティングすることにより、振幅、共振周波数、そしてQファクターを生み、これらを2Dイメージにプロットしたり、あるいはフィードバック信号として使用されます。



(LaxSr1-x)MnO3サブストレート上のBiFeO3ナノ粒子の(シングル周波数PFM相当による)(a) 表面形状、(b) 共振振幅、(c) 位相、(d) 共振周波数、(e) Qファクター、(f) 位相マップ。イメージングは、R. Vasudevan氏(ニューサウスウエールズ大学、オーストラリア)およびA. Kumar氏(ORNL)によります。サンプルはP. AJoy氏およびH. S. Potdar氏,HSP/PAJ,NLLインドのご好意によります。



参考文献

1. G. Binnig, C.F. Quate, and C. Gerber, Atomic force microscope, Physical Review Letters 56 (9), 930-933 (1986).

2. Proksch and E.D. Dahlberg, A detection technique for scanning force microscopy, Review of Scientific Instruments 64 (4), 912-916 (1993).

3. B. J. Rodriguez, C. Callahan, S. V. Kalinin et al., Dual-frequency resonance-tracking atomic force microscopy, Nanotechnology 18 (47) (2007).

4. A. B. Kos and D. C. Hurley, Nanomechanical mapping with resonance tracking scanned probe microscope, Measurement Science & Technology 19 (1) (2008).

5. D. Platz, E. A. Tholen, D. Pesen et al., Intermodulation atomic force microscopy, Applied Physics Letters 92 (15) (2008).

6. R. Nath, Y. H. Chu, N. A. Polomoff, R. Ramesh, B. D. Huey, Appl. Phys. Lett, 93, 072905 (2008).

7. S. Jesse, S. V. Kalinin, R. Proksch et al., The band excitation method in scanning probe microscopy for rapid mapping of energy dissipation on the nanoscale, Nanotechnology 18 (43) (2007).